こんにちは。石田淳です。
「人材を育成する」
これはすべての企業に与えられた命題ともいえることです。
そして、多くのリーダー、マネジャーが、「人が育たない」という悩みを抱えています。
私はこうした悩みの背景として、2011年発行の『教える技術』(かんき出版)のまえがきで、3つの原因を紹介しました。
まずひとつ目は、
「仕事は盗んで覚えるものだ」という
我が国のビジネス界の〝古い慣習〟があります。
身もフタもない話かもしれませんが、自分の仕事はかが懇切丁寧に教えてくれるものではなく、自らがある意味勝手に覚えなければならない……そんな考え方が、未だに残ってるのです。それは先人から受け継いできたやり方であり、自分もそうしてきた。だから自分の部下も同じようにすべき、という乱暴な考え方です。
さらに、「企業が求める人物像の変化」がありました。
消費が拡大していた高度経済成長下では、モノは作れば作るだけ、売り込めば売り込むだけ売れました。
こうした状況においてはいってみれば自ら工夫せずとも、会社のいうとおりに働きまくる社員が重宝されたわけです。
ところが、消費が成熟し、マーケットが縮小してきた今、そして今後においては、トップダウンを待つのみではなく、現場の人間が自ら考え、自らが動かなければなりません。
「上司」と呼ばれる人も自ら数字を上げなければならず、それこそ「部下を育成している時間もない」といった状態でしょう。
そして、「働く人たちの価値観の多様化」ということも、人材育成がうまくいかない原因のひとつとなっています。
「たくさん給料が欲しいから、たくさん働く」
「もっと出世がしたいから、たくさん働く」
「早く成果を出したいから、自ら仕事を覚える」
もちろんそうした考えを持つ人もいるでしょうが、それはもはや決して「当たり前」のことではありません。
「別に稼げなくてもいい。自分の時間を大事にしたい」
「出世なんて面倒だ」
「誰も仕事を教えてくれないから、次の会社を探そう」
……こうした思いを持つ人は、今や決して少数派でありません。
このような背景に加え、さらに新しい背景があります。
それは「働くスタイルの多様化」です。
「オフィスへの出勤」
「顧客との接触」
「定例の会議」
……こうした「あって当たり前のスタイル」が、もはや当たり前ではなくなっているのが現在です。この状況の人材育成で求められるのは、「どんな状況下においても通用する」考え方、方法でしょう。私たちが提唱する「教える技術」が、まさにこれです。
次回、さらに詳しく
新時代の「教える技術」について
お話ししていきましょう。