アメリカの企業マネジメントの概念に、「トータル・リワード(Total Reward)」というものがあります。
簡単にいえば、仕事に対する報酬とは「お金」や「地位」だけに限らず、相手によって様々な報酬を考え、与えるべきだという考え方です。
- 「Acknowledgement(感謝と認知)」
- 「Balance[of work and life](仕事と私生活の両立)」
- 「Culture(企業文化・組織の体質)」
- 「Development[Career/Professional](成長機会の提供)」
- 「Environment[work place](労働環境の整備)」
これら頭文字AからEの要素が、アメリカの「報酬」に関する教育機関「ワールド・アット・ワーク」の提唱する
トータルリワードの大きく分けた5つの要素で、私はそれに「F」=「Frame(具体的行動の明確な指示)」
の要素を加え、今からおよそ10年前にこの概念を書籍で紹介しました。
その当時、私が何人もの経営者に言われたことは…。
「石田先生、わざわざ部下が〝何のために仕事をするか〟なんて検証する必要あるんですか?」
「会社員なんだから、与えられた仕事をするのは〝当たり前〟でしょ」
「なんで部下に〝感謝〟を表明するんですか?」
などというものでした。
今となっては社員が「何を報酬と感じるか」、すなわち社員それぞれの「動機付け条件」を考えるのは、マネジメントの基本ともいえることでしょう。
しかし、たった10年前には、「部下の動機付けを考える」「部下をほめる」ことすら、「おかしなこと」に見えたのです。
社会情勢は時代とともに変わるものです。
「トータル・リワード」についても、マネジメントスキルとしては、現在はさらに進化したかたちでの実践が試みられています。
ただ、時代が変わっても「人間の行動原理」は変わりません。
リーダーが着目すべきは、この事実でしょう。
「変わるものとは何か?」
「変わらない原理は何か?」
来月のアメリカ視察でも、それを学ぼうと思っています。