こんにちは、石田淳です。
職場に「安全行動」を根付かせ、それを当たり前にする。
それが安全管理者の務めであり、行動科学に基づいた「BBS」(Behavior Based Safety)の基本であるというお話を前回いたしました。
では、「安全行動」とはどういうものなのか?
それは文字どおり「職場の安全に直結する(ピンポイント)行動」であり、ごく簡単に言ってしまえば、「やらないこと」ではなく、「やる(べき)こと」ということになります。
たとえば「工場内では〝走らない〟」ではなく「ゆっくりと歩く」。
そういえばイメージしやすいでしょうか。
前回お話ししたように、BBSは「危険な行動を排除する」のではなく、「安全行動を根付かせる」というアプローチのマネジメント手法です。
誤解を恐れずにいえば、これは企業の「文化」を変えるという大きな取り組みでもあるのです。
たとえば工場内の作業における「指さし呼称」。
「しっかりと指さし呼称をすること」
これは安全行動を示しているもののように思えますが、行動科学マネジメントにおいては、具体的な行動とは言えません。
・作業をはじめる直前に所定位置で立ち止まる
・指差し確認/喚呼する対象物を「目で見る」
から始まり、
・人差し指の先端を対象物の中心に向ける
・その直後に「よし!」と声を出す
まで、指さし呼称を細かく分解して伝えることが再現性のあるマネジメントの基本なのです。
このように「何をすればいいのか」を明確に伝えること、その行動を習慣化させることがBBSの大きな特徴です。
ただし、多くの組織がこうしたマネジメントの大前提を見逃していることがあります。
その大前提とは「自社における正しい安全行動とは何か?」ということが見極められている、ということ。
次回、この問題についてお話ししたいと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■石田淳 著作紹介59
『組織行動セーフティマネジメント』
ダイヤモンド社 2011年刊
行動科学マネジメントをベースとした「BBS」をはじめて紹介した一冊。その後BBSは多くの事例を元に進化し、前回紹介した『無くならないミスの無くし方』へとつながりますが、本作で取り上げた数々の事例も多くの企業の安全管理の参考になるはずです。