こんにちは。石田淳です。
「先行条件(A)があり、そのために行動(B)を起こし、行動の結果(C)がメリットのあるものであれば、人は行動を繰り返す」
人が行動を繰り返す、すなわち「行動定着」「習慣化」のカギとなる「ABCモデル」について、前回復習しました。
「行動の結果をメリットのあるものにする」
これは行動科学マネジメントの基本ですが、職場に新習慣を根付かせるにあたって多くの上司が〝そもそも〟見落とすことがあります。
それが(B)の「行動」そのもの。
行動のハードルが高ければ、人は行動を継続しない。
ごく簡単に言ってしまえば「面倒なアクション」を敬遠するのが人間なのです。
たとえば一時期、チームづくりのノウハウとして「サンキューカード」という手法が注目されました。
メンバーに感謝の意を伝えるために、カードに感謝の言葉を書いて渡す。これによってメンバーの承認欲求が満たされ、コミュニケーションがうまく回るというものです。
しかし、こうした手法を導入しようと試みてもなかなかうまくいかない。続かない。そんな声はたくさん聞かれました。
「気恥ずかしいから」「いまさら感があるから」
そんな内面的なもの以前に問題なのは、実は「サンキューカードを書くという行動自体が面倒なものだから」ということです。
相手が喜びそうな言葉を、カードとペンを用意して上手に書く。
「それだけのこと」と思われるでしょうが、実際にはそれは、意外と時間と手間をかける作業なのです。
たとえばあらかじめ感謝の言葉(各種)が書かれたカードを用意しておき、メンバーはその中からふさわしいカードを選んで相手に渡す。それだけでも「行動のハードル」はかなり下がるものです。「面倒だからやらない」は、関係なくなります。
「その行動はハードルが高くないか?」
単純な話ではありますが、いかなる場面でも上司は常にこのことを念頭に置いたほうがいいでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■石田淳 著作紹介28
『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』青春新書インテリジェンス 2013年刊
「時間がない」「忙しくて自分の好きなことをやる暇がない」と嘆く人がいる一方で、ハードワークの中でも充実した時間を作っている人々もいます。両者の違いを行動科学の見地から検証した「時間の使い方」のノウハウに関する一冊です。